8月20日(日本時間21日)、IBF世界スーパーバンタム級、フェザー級を制した37歳のキコ・マルチネス(スペイン)=44勝(31KO)12敗2分=が引退を発表。19年間のリング生活に別れを告げた。4月8日に東京・有明アリーナで行われた阿部麗也 (KG大和)=25勝(10KO)3敗1分=選手との、IBF世界フェザー級挑戦者決定戦に敗れた後も、帰国後すぐにトレーニングを再開。「誰にでも、好きなことをする権利がある。それが他の誰にも害を与えない限りは」と語り、自らの進退に付いて「一度出した結論を変えるようなことはしない」と話していた。

2004年6月、3回TKO勝ちでプロデビュー。2013年8月、初の米国リングとなったアトランティックシティで、23戦(12KO)無敗のIBF世界スーパーバンタム級王者ジョナサン・ロメロ(コロンビア)を6回TKOに破り王座を獲得。2度目の防衛戦で来日。2014年4月、大阪城ホールで元WBC世界バンタム、フェザー級王者長谷川穂積(真正)選手の挑戦を7回TKOで撃退。試合後、長谷川選手をリスペクトするマルチネスの姿には称賛の声が相次ぎ、日本人ファンの心を掴んだ。

2014年9月、英・ベルファストで後の2階級制覇王者カール・フランプトン(英)との指名戦で、12回判定負けを喫し王座陥落。2015年7月、WBA世界スーパーバンタム級王者スコット・クイッグ(英)に2回TKO負け、2016年2月にはWBA世界フェザー級スーパー王者レオ・サンタ・クルス(メキシコ)に5回TKO負けと、2度の世界チャレンジに失敗。

2017年5月にはジョシュ・ワーリントン(英)に敗れたが、一人の英国人ジャッジが114-114のイーブとスコアする大健闘だった。2019年5月、ゲイリー・ラッセルJr(米)の持つWBC世界フェザー級王座に挑むも5回TKO負け。2021年2月には英・ロンドンでゼルファ・バレット(英)にも敗れた。

しかし、それでも戦い続けるマルチネスにIBF世界フェザー級王者キッド・ギャラード(カタール)=28勝(17KO)1敗=への挑戦話が舞い込む。2021年11月、英・シェフィールドで行われたタイトル戦で世界ランク15位のマルチネスは、大番狂わせの6回TKO勝ち。35歳、7年ぶりに世界王座に復帰した新王者は、この3年間、体調管理に気を配り、休みなく365日トレーニングを続けて来た事を明かした。

2022年3月、英・リーズでワーリントンとの再戦に応じたマルチネスは、初回ワーリントンのバッティングにより大きなダメージを被ったことが尾を引き7回TKO負け。試合後、思うような戦いが出来なかった事を残念がったが、ワーリントンが顎と左手の骨折が判明した事を知ると、すぐさま励ましのメッセージを届けている。

マルチネスには引退を進める声もあがったが、ワーリントン戦後、「負けても勝っても、娘たちにあきらめないことを教えるには、立ち上がらなければならないのです」と、直ぐにトレーニングを再開。2022年10月、英・ロンドンで行われた再起戦では、IBF7位のジョーダン・ギル(英)=27勝(8KO)1敗1分=を7回TKOで破り、またしても英国ファンを驚かせた。

今年4月、ラストファイトとなった阿部選手との試合では追い足届かず12回判定負け。その後もトレーニングを続けながら、悔いの残らない道を自ら選択した。素晴らしいファイターでした。