1980年８月に11度（10KO）防衛中のホセ・”ピピノ”・クエバス（メキシコ）を２回TKOで破り、WBA世界ウェルター級王座を獲得。シュガー・レイ・レナード（米）、マービン・ハグラー（米）、ロベルト・デュラン（パナマ）らと激闘を繰り広げ、1988年11月にはジェームス・キンチェン（米）を12回判定で破り、WBO世界スーパーミドル級王座を獲得し、史上初の5階級制覇を達成した名王者トーマス・”ヒットマン”・ハーンズ（米）が、現在、行方不明となっている事を娘のナターシャ・ハーンズ＝バーンズが明らかにした。
67歳のハーンズは67戦のプロキャリアで4千万ドル（約62億2500万円）以上を稼いだとされるが、詐欺師や悪徳業者に財産を食い荒らされ、健康が衰えるにつれて資産は減っていった。
今年4月に固定資産税の未払いにより、ミシガン州サウスフィールドの不動産が差し押さえられたハーンズは、9月に投資会社が競売で落札し所有権を得た後、立ち退き命令書が送達され、11月までに退去するよう通告を受けた。
しかし、ハーンズはこのような事態を全く理解していなかったといい、「ある日は何かを話すと理解してくれるのに、次の日にはその話をすっかり忘れてしまうのよ」と、ナターシャは語っている。
ナターシャが写したヒットマンが失踪する前に暮らしていた旧宅の状況は、冷蔵庫にはペットボトルの水と古びたピザのスライスが数切れあるだけで、ほぼ空っぽ。地下室は黒いカビに覆われている。そして、ひび割れて汚れた窓越しに、天井が崩れ落ち、ハーンズの所有物の多くが放置されている様子が伺える。
娘は、父親の精神障害、身体障害、そして適切な管理なしに父親の財産が消失する懸念を理由に、後見人選任を申し立てたが、オークランド郡検認裁判所は郵便番号の記載漏れを理由に、メールで彼女の申請を却下している。
2010年、ハーンズは45万ドルの連邦税滞納を解消するために試合で着用したグローブや、コレクションのクラシックカーを競売にかけざるを得ない状況となり、自ら競売会場に足を運び、想い出多いそれらを最高入札者に売り渡されるのをただ見守るしかなかった。
ハーンズはが所有していた、サウスフィールドの森に囲まれた2エーカーの土地に建つ、8,700平方フィートの邸宅は、住宅ローンが2020年で全額完済されている。しかし、なぜこんなことになったのか。
老いて荒廃したハーンズが、知らず知らずのうちに詐欺の被害者となっている可能性があることが分かっており、その原因はC＆Sマネジメントを統率していたジャック・ウルフ（服役中）との関りと見られている。
ウルフに騙され競売に掛けられた自宅は22万6千ドルで落札されたが、滞納税額はわずか10万ドル。ハーンズは残りの12万6千ドルを受け取る権利があるが、それを受け取る法的期限は過ぎている。しかし、利益無償で代理すると申し出た弁護士は、その金銭を回収できる可能性はあると見ている。
「問題はトミー・ハーンズが行方不明になっていることだ」
ハーンズは今どこにいるのか。何をしているのか。ナターシャは異母兄弟が父親を何処か知らぬ場所に連れ去った可能性があると述べている。1日も早く元気な姿を見せてくれることを祈ります。
