5月4日(日本時間5日)、米・ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催された、トップランク興行のメインイベント。4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ。王者の井上尚弥(大橋)=29戦全勝(26KO)=選手に、WBA世界同級1位、IBF8位、WBO10位ラモン・カルディナス(米)=25勝(14KO)1敗=が挑んだ。

カルディナスの左は共同プロモーターのサンプソン・リューコーイッツ。セルヒオ・マルティネス(アルゼンチン)、キコ・マルティネス(スペイン)らを手掛け、現在はセバスチャン&ガブリエラのフンドラ兄弟らを傘下に収めている。

井上選手は立ち上がり、カルディナスを威嚇するように軽い連打。

井上選手はジャブを突きさし、重い右ストレートを打ち込んだ。



カルディナスもボディを返し、右ストレートをヒット。井上選手は珍しく鼻から出血したが、それでも勢いは変わらず井上選手の攻勢は変わらない。第2ラウンド終盤、井上選手が接近し放った左フックを外したカルディナスは、低い姿勢から左フックを一閃。

井上選手はしりもちを付くようにダウン。まさかの展開にリューコーイッツ・プロモーターは思わずバンザイ。


キャリア2度目のダウンを喫した井上選手は、落ち着いた表情でトーマス・テイラー主審(米・カリフォルニア州)の8カウントを聞いた。

井上選手にダメージは感じられず、3回からは再び攻勢に出る。

井上選手は強いジャブを軸に、右ストレート、左ボディでカルディナスを削っていく。



ガードを高く上げブロックを固め井上選手の強打に耐えるカルディナスは、打ち終わりを狙い左右フックを強振。しかし、井上選手は2ラウンドのミスは起こさず、よく見て交わした。

井上選手はジャブ、右ストレートから左ボディを打ち込みカルディナスの動きを止めるが、カルディナスはガードを崩さず左右フックを強振し抵抗。しかし、井上選手の波状攻撃の前に被弾は多く、徐々にダメージを蓄積。6回はダウン寸前まで追い詰められた。

迎えた第7ラウンド、井上選手の攻撃は止まらずカルディナスも辟易。しかし、最後の力を振り絞るように左フックを強振し井上選手を押し込む。だが、井上選手は体制を入れ替えると再び攻勢に出る。
右ストレートで後退するカルディナスに左フックを放ち、さらに右ストレートを2発、3発と畳みかけると、ここまでよく耐えていたカルディナスも、ついに腰からキャンバスへ落下。

ダウンから立ち上がりカルディナスは、何とか7回を乗り切ったが蓄積されたダメージは大きい。だが、まだあきらめの表情はなく勝利への執念を捨てていない。

第8ラウンド、井上選手は容赦なくフィニッシュを狙ってカルディナスに迫り、右ストレートを叩き込む。

そして、カルディナスのガードを突き破り、井上選手の強烈な右アッパーがヒット。

コーナーに詰まったカルディナスに井上選手は容赦く連打を浴びせる。

カルディナスはガードを固め、上体を上下に動かし必死のディフェンス。だが、井上選手の連打は止まらない。

8回45秒、テイラー主審はついに試合をストップ。

試合後「まだやれた」と訴えたカルディナスだが、「私には選手を無事にリングから降ろす責任がある」というテイラー主審に反論はしなかった。
試合後、敗れて評価を上げたカルディナスには、再び大きなチャンスが与えられそうで、リューコーイッツ・プロモーターは、「本田氏(帝拳プロモーション)からカルディナスを日本で見たいという連絡を貰っている」と話し、十分な休養を取った後、日本のリングに上がる事を視野に入れている。


激闘を制した井上選手は、「僕が殴り合いを好きだということは、わかっていただけたと思います。すごく楽しかった」と語り、「(ダウンは)自分でも驚いたけど、その後しっかりと組み立て直せた」と試合を振り返り、「相手も必死に倒しにきている。ボクシングはそんなに甘くないと痛感した」と反省も忘れなかった。

7回までのスコアはマックス・デルーカ(米・ニューヨーク州)、デビッド・サザーランド(米・オクラホマ州)、スティーブ・ワイスフェルド(米・ニュージャージー州)の3人が揃って68-63。井上選手は2回のダウン以外に失点はなかった。

井上選手の次戦は、9月14日にWBA世界同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)=13勝(10KO)1敗=と対戦する事で、マッチルーム・ボクシングのエディ・ハーンが契約が成立した事を報告。試合地は東京と伝えられているが、今年7月に名古屋にオープンする、IGアリーナ(最高約1万7千人収容)での開催が有力との報道もある。
また、この試合はシンコ・デ・マヨの大トリを飾ったが、トップで行われたニューヨークでの3試合はいずれも、アクションに乏しく盛り上がりに欠け、サウジアラビアで行われた、世界一の報酬を得る男カネロ・アルバレスvsスカルの試合は全く噛み合わず、無理はしない、危険は冒さずで、極端に手数が少ないファイトとなり、試合後のカネロの「ビバ・メヒコ」も虚しく聞こえるばかり。
フラストレーションがたまった2日間の後だけに、危険を顧みずKOを狙う井上選手のファイトには、「この試合が文句なく最高。一番だった」との評価が、世界中のファン、関係者から多く寄せられている。次のアフマダリエフ戦も、楽しみです。