6月8日(日)に東京・有明アリーナで、IBF世界バンタム級王者西田凌佑(六島)選手=10戦全勝(2KO)=との王座統一戦に臨む、WBC世界同級王者中谷潤人(M・T)=30戦全勝(23KO)=選手が、21日に約1ヶ月の米・ロサンゼルス合宿で、過去最多となる250ラウンドのスパーリングを行い帰国。

2016年、4団体統一世界スーパーバンタム級王者井上尚弥(大橋)=30戦全勝(27KO)=選手との対戦実現に向けたステップが踏み出されている中谷選手は、パウンド・フォー・パウンド・ファイターの一人として認識され、最近は世界的にも知名度を高め、ビッグバンの動向は世界中のファン、関係者からも注目を集めている。

中谷選手の帰国に合わせるかのように、15歳の時から指導するトレーナーのルディ・エルナンデスは、メディアに対し中谷選手はWBC世界スーパーフライ級王者ジェシー・”バム”・ロドリゲス(米・帝拳)=21戦全勝(14KO)=に、「100%KOで勝てる」と断言。

「バム戦を希望している。ジュントは6ランドから8ラウンドで100%勝てる。KOできる。自信はあるが、これは私の意見だ。個人的願望ではなくビジネスの問題だ」と言い切った。

しかし、これはエルナンデス氏が言うように自分個人の意見であり、ロドリゲスにやる気があれば、中谷選手がバンタム級で戦ううちならやりますよという、サインに他ならないだろう。

Jesse Rodriguez

ロドリゲスは7月19日(日本時間20日)に米・テキサス州フリスコのフォード・センターで、WBO世界同級王者ブメレレ・カフ(南アフリカ)=11勝(8KO)無敗3分=との王座統一戦が決定。将来的には階級を上げる計画があるが、今のところ、スーパーフライ級での4団体王座統一を目指している。

カフに勝利すれば、井岡一翔(志成)=31勝(16KO)4敗1分=選手に連勝した、WBA世界同級王者フェルナンド・”プーマ”・マルティネス(アルゼンチン)=18戦全勝(9KO)=との対戦に動く可能性が大で、マルティネスもそれを待ち望んでいる。

今回のロサンゼルス合宿に初めて栄養士を帯同した中谷選手は、「体も大きくなっている」と話している通り、西田選手に勝利した場合、スーパーバンタム級に上がる可能性が高いと見られる。少なくとも世界バンタム級ランキングは、そう動いているように感じる。

中谷選手が王座を返上した場合、IBF王座は西田選手への指名挑戦を待機した同級3位ホセ・サラス・レイエス(メキシコ)=16戦全勝(10KO)=と、元WBA王者で5位の井上拓真(大橋)=20勝(5KO)2敗=選手による王座決定戦。

IBFでは4位にランクされ、WBCでは1位までランクアップしている那須川天心(帝拳)=6戦全勝(2KO)=選手が、WBC王座決定戦へ出場。2位には元世界2階級制覇王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)=44勝(28KO)4敗=がランクされている。

そして、中谷選手が階級を上げた場合、世界的にも一番話題性がある対戦相手は、井上選手からダウンを奪う大善戦を見せ、敗れながらも評価を上げ、日本では一気に的知名度を上げたラモン・カルディナス(米)=25勝(14KO)2敗=となる。

Ramon Cardenas

井上戦のすぐ後、カルディナスをプロモートする、サンプソン・リューコーイッツは、「本田氏(帝拳プロモーション)からカルディナスを日本で見たいという連絡を貰っている」と話しており、中谷vsカルディナスが実現すると見る向きはある。

中谷選手が井上選手との対戦を前に、井上選手に対しダウンを奪う激闘を演じたカルディナスと戦う事は、両者の比較を見出す観点からも、前哨戦としてファンの興味を注ぐ事になり、大きな注目を集めるだろう。

とはいえ、中谷選手はまずは目の前の敵、西田選手に勝利しなければならない。西田選手は独特のテクニックを持ち、豊富なスタミナと強い精神力を持つサウスポーで、昨年5月4日にエディオン・アリーナ大阪で行われたIBF王座への挑戦試合で、強打の王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)=22勝(13KO)3敗1NC=から、4回に左ボディでダウンを奪い、一歩も引かぬ打撃戦を展開し、12回判定で破り王座を奪取した試合は見事だった。

中谷選手とはサウスポー対決になる。身長、リーチで勝る中谷選手の有利は否めないが、曲者の西田選手がどんな戦略を練って来るか。自ら出て相手を圧倒するタイプではないので、中谷選手の出ばな、打ち終わりに合わせるカウンターが、西田選手の勝機を見出すことになる。

ほんのわずかな空間の中のどのタイミングで、どんな仕掛けを用意して来るのか。中谷選手の鋭く研ぎ澄まされたパンチが予想以上であっても、西田選手にはその現実を受け入れ、自ら立てた作戦を遂行しようとする能力がある。

ほんのわずかというよりももっと短い瞬間の中で、躊躇するようなことがあれば、中谷選手を相手に勝利は期待できないが、西田選手がどう戦うか。サウスポー同士という事も、大きなポイントになる。

中谷選手が井上選手との戦いに向け階段を上るのか、西田選手がそこに待ったをかけるのか。まずは6月8日に注目。