7月30日に横浜BUNTAIで開催された、帝拳プロモーション主催の「U-NEXT BOXING.3」。トリプル世界戦のトップバッターを飾った、帝拳ジム期待のホープ。WBA世界ライトフライ級1位にランクされる高見亨介(帝拳)=10全勝(8KO)=選手は、2階級制覇のWBA世界同級王者エリック・ロサ(ドミニカ)=8勝(2KO)1敗=を圧倒。10回2分48秒TKO勝ちで、公約通りのKOで世界王座奪取に成功。
帝拳ジムの本田明彦会長が、「ライトフライ級は(世界王座を)取るに決まっている」と絶賛した23歳のホープは、このクラス最強とうたわれる、”ミニ・パックマン”・ロサを相手に初回から臆することなく打ち合いに応じた。第2ラウンド、圧力を掛け前に出て来たサウスポーのロサに、この試合の為に磨いてきた強烈な右ボディアッパーを決め、さらに左フックをヒット。ロサの勢いは止まり、はっきりと高見選手が主導権を握った。
以降、ロサも2階級制覇王者の意地を見せ、試合の流れを変えようと対峙したが、高見選手は足を使いジャブを使って見せたりして距離を使い分けると、アウトサイド起動から放たれる右ストレートをねじ込み、右ボディを狙い打ち。ロサは回を重ねるにつれジリ貧となって行った。
ラウンドが進むにつれて、ロサがインターバルで口に含む水の量が多くなって行くのがわかる。「最後まで持たないな」。そして試合は第10ラウンド、高見選手の右ボディアッパーがロサの腹にめり込むとガックリと動きが落ちる。チャンスと見て攻勢に出た高見選手の右フックが決まると、ロサはコーナーに突っ込むようにダウン。
立ち上がり再開に応じたロサだが、上も下も効いている。フィニッシュを狙う高見選手の前に、王者はなりふり構わないクリンチに出る。もつれ合いキャンバスへ倒れ込むロサ。ここでロサの顔を覗き込んだマーク・ネルソン(米)主審は試合をストップ。怪訝な表情を見せたロサだが、イスマエル・サラス・トレーナーは、敗戦を黙って受け入れるしかなかった。

9回までのスコアはジャッジ一人が高見選手のフルマーク。他の2人は89とスコアする圧勝。アマ経験200戦以上、ドミニカ史上最速(ボクシング史上2番目)のプロ4戦目で世界王座を獲得していたロサに付け入る隙を与えず、圧倒した高見選手の勝利は、「sensational」と海外のファン、関係者をうならせた。
「キョウスケ・タカミは最初から最後まで試合を支配し、エリック・ロサにパワーショットとボディショットを打ち込んだ。ロサも奮闘したが、あまりにも多くのダメージを負い、レフェリーが介入せざるを得なかった」
”モンスター”・井上尚弥(大橋)選手を擁する大橋ジムの大橋秀行会長も、「今日は日本にスーパースター候補が誕生した日になるだろう」と予言し、ライトフライ級では168センチと長身なので、今後は間違いなく複数階級制覇をする逸材だと絶賛。
WBA世界ライトフライ級で日本人選手が王座を獲得したのは、1976年10月10日に山梨県甲府市でプロ9戦目、全く無名だった具志堅用高(協栄)選手が、ファン・グスマン(ドミニカ)を7回KOで破り王座を獲得したのが最初。”リトル・フォアマン”の異名を持つグスマンは、初回KO勝ちが11度という強打者で、公開スパーではバンタム級の選手を倒していたが、具志堅選手は怖いもの知らずの打撃戦を挑み圧勝。以後、13度の防衛に成功し国民的スターとなり、国際ボクシングの殿堂入りも果たした。

ほぼ半世紀の時を経て、世界的には全く無名の高見選手が、”ミニ・パックマン”に勝利した試合は、具志堅選手の勝利を彷彿させる見事な試合で、帝拳ジムの「秘密兵器」は、今後、世界リングのひのき舞台へ躍り出ていく事になるだろう。
高見選手には3月13日に東京・両国国技館で高見選手の兄弟子、岩田翔吉(帝拳)=13勝(9KO)2敗=選手を12回判定で破り、WBO世界ライトフライ級王座を獲得したレネ・サンティアゴ(プエルトリコ)=14勝(9KO)4敗=が、早速、王座統一戦に名乗りをあげている。
サンティアゴは9月27日(日本時間28日)に米・フロリダ州キシミーで、同級15位アサエル・ビジャール(パナマ)=21勝(15KO)4敗4分=を相手に初防衛戦が決まっているが、ビジャール戦は全く眼中にないようで、年末には日本で高見選手と対戦する用意がある事をアピール。
また、12月27日にサウジアラビア・リヤドで開催される、4団体統一世界スーパーバンタム級王者井上尚弥(大橋)=30戦全勝(27KO)=選手の試合をメインとする、”リヤド・シーズン”への出場話も出て来た。今後に大注目。