7月20日(土)に東京・両国国技館で開催される、「Prime Video Presents Live Boxing 9」の前日計量が都内で行われたが、WBO世界スーパーフライ級王者田中恒成(畑中)=20勝(11KO)1敗=選手に挑戦する、同級12位ジョナタン・ロドリゲス(メキシコ)=25勝(17KO)2敗1分=は、リミットを2.9キロオーバーする55キロを計測。再計量までの2時間の猶予で少しでもウェイトを落とし、試合実現が目指されたが、ロドリゲスは足が痙攣し、走る事もままならず、健康上の理由により試合は中止となった。

ロドリゲス陣営のパコ・ダミアンプロモーターは、「申し訳ない。恥ずかしいこと。体重超過をしようと思って、日本に来たわけではない」と釈明。「水曜日の練習で急に痙攣を起こし、息も出来ない状態になり練習を中止した」と、異変が起きていた事を明かし、計量当日朝もサウナに入ったが、汗が全く出なかったとしている。

畑中ジムの畑中清詞会長は、「2階級上の階級。うちの選手をやらせるわけにはいかない。そういった例をつくらせない」と、試合の中止を決断。日本で開催される世界タイトルマッチが、オーバーウェイトにより中止になるのは、史上初めてという事態になった。

日本で行われた世界戦では、1974年10月18日に横浜文化体育館で行なわれた、WBA世界フライ級タイトルマッチで、王者のチャチャィ・チオノイ(タイ)が最初の計量(当日計量)で2キロオーバー。1時間後の再計量でも400グラムしか落ちず、ギブアップ。王座は剥奪された。

しかし、当時のJBCルールでは同一クラスの選手が戦う場合、3ポンド(約1.4キロ)の差があった場合は試合が成立しないとなっていた。両者のウェイト差は1.8キロ。しかし、WBAルールでは4ポンド(約1.8キ)までは認められるという事で、世界戦開催においてローカルルールの主張をしていたJBCはそれを翻し、花形vsチャチャィを花形選手が勝った場合のみ、新王者という世界戦として承認。

試合は花形選手が6回TKO勝ちで新王者となったが、「減量を放棄したチャチャィは元気がよかったぞ!」と、花形氏は当時を回顧されている。世界戦の興行プロモーターと、出場する選手のマネジャーが同一(名義上は違うが)という時代であり、TVの生中継(TV東京)も決まっており、絶対に世界戦興行を中止させるわけにはいかない時代だったが、それだけ、体重管理に対する選手への信用と信頼感があった。

近年は世界戦のみならず、国内レベルの試合でもオーバーウェイトが勃発。健康管理上、無理強いは出来ないとなると、ウェイトにより管理されている、このスポーツにおいて、信用の根源は事前のウェイトチェックによる管理でしかなくなるように思われますが、果たしてどうなるのか。

畑中会長の「うちの選手をやらせるわけにはいかない。そういった例をつくらせない」は、苦渋の末の英断として、これからのボクシング界を変えて行く事になると思います。田中選手、この試合までやって来た練習は次の試合に活きますから、腐らず頑張ってください!。