WBO世界スーパーウェルター級王者で、WBC世界スーパーミドル級2位、WBO3位、IBF5位にランクされるハイメ・ムンギア(メキシコ)=45勝(35KO)2敗=は、5月3日(日本時間4日)にサウジアラビア・リヤドのザ・べニューで、ブルーノ・スラース(フランス)=26勝(5KO)1敗2分=に12回判定勝ちを収めた試合後に行われた、自主的アンチドーピング協会(VADA)の薬物検査で、外因性テストステロンの代謝物が検出された事が明らかになった。
ムンギアはSNS上でドーピングを否定。
「私のボクシング・キャリアを通じて、何度もアンチ・ドーピング検査を受けてきたが、陽性反応が出たことは一度もない。今回のトレーニングキャンプ中にも2度検査を受けたが、いずれも陰性でした」
「私は、私が常にクリーンなアスリートであることを証明するために、遡及的、現在、あるいは将来のいかなる検査も受ける用意があります」とのコメントを発している。
今後、10日以内にBサンプルの検査を要求することができるが、B検体からも禁止薬物が検出された場合、ムンギアは出場停止処分を受けることになり、スラース戦の裁定も勝利からノーコンテストに覆る可能性が出て来た。
ムンギアは昨年12月14日(日本時間15日)にメキシコ・ティファナで行われたスラースとの初戦で、2回に左フックで先制のダウンを奪い、その後も優勢に試合を進め迎えた第6ラウンド、連打で攻め込んだところにスラースの右フックを喰いダウン。必死に立ち上がったが、ダメージは甚大で試合はそのままストップ。
圧倒的有利と見られた試合で、キャリア初となるKO負けを喫したムンギアは、すぐに再戦条項を行使しての雪辱戦を希望。

今年に入り、かつて戦ったライバルの4団体統一世界スーパーミドル級王者サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)=63勝(39KO)2敗2分=を、デビュー時から指導するエディ・レイノソの下に弟子入り。チーム・カネロの一員として、トレーニングを行っていた。
かつてカネロは、2018年2月に行われたVADAによる抜き打ち検査で、クレンブテロールの陽性反応が出た事に対し、カネロはクレンブテロールに”汚染された牛肉”を食べたのが陽性反応の要因だと主張。「私はこの恥ずべく状況を明らかにするために必要なすべてのテストに協力する。真実が勝つと信じている」とコメント。
WBCが推進するボクシング・クリーン・プログラムへの登録を拒否していたカネロは、WBCランキングから外されると態度を変え、すぐに登録。米・ネバダ州コミッションからは6ヶ月のサスペンド(最も軽い措置)となり、5月に決まっていたゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との対戦は9月まで延期された。
ムンギアの場合は”外因性”で、テストステロンがムンギア自身の内分泌系ではなく、外部からのものであることを意味しており、”汚染牛肉 “の言い訳を生み出した、メキシコの牛に蔓延するPED、クレンブテロールとは混同されるものではない。
しかし、謎である。ムンギアはこれまで一度も陽性反応が出た事はないと言い、トレーニングキャンプ中の2度の検査も陰性。”外因性”である原因が今後、追及されていくだろうが、Bサンプルの検査も陽性(その可能性は高い)だった場合、厳しい処分がくだされる事になり、キャリアは中断される。今後に注目。