2012年ロンドン五輪ミドル級決勝戦で村田諒太(帝拳)選手に敗れたエキスバ・ファルカン(ブラジル)が、獲得した思い出が詰まる記念の銀メダルを売却した事が明かになった。ファルカンは、これは単なる経済的な困難ではなく、家族の将来や、自身のジムの運営体制の構築といった個人的な計画に関わる決断だとしている。
「借金のためにメダルを売ったわけではありません。今は少しの貯金があります。メダルを売った理由の一つは、自分のジムを開きたいと思ったからです。今はジムを経営していますが、場所は借りているんです。それに、3人の子供たちにもっと良い生活を送らせてあげたい。これが大きな理由の一つです。そして、はっきり言っておきたいのですが、誰も自分の意志でメダルを売ることはありません。必ず理由があるのです」(ファルカン)
36歳のファルカンはロンドン五輪決勝戦で村田選手と互角の戦いを演じたが、僅かに及ばず13-14の判定負け。翌年の世界選手権で2回戦で敗退すると、ボブ・アラムのトップランクと契約しプロ転向。2014年2月にジョシュア・ロバートソン(米)を4回TKOで破り初戦を飾った。

順調に白星を重ねたファルカンだが、なかなか世界戦のチャンスは訪れず時間を費やしたが、2023年7月にプロキャリア31戦目でようやく念願の世界タイトル戦のリングに上がる。ドイツのヴッパータールで、ビンチェンツォ・グアルティエリ(独)=25勝(8KO)1敗1分=と空位のIBF世界ミドル級王座を争ったが12回判定負け。この敗戦でファルカンはトップランクから解雇される。
そして、2024年6月にブラジル・サンパウロで行われた再起戦でも、エベール・コンセイソン・ソウザ(ブラジル)=11戦全勝(5KO)=に10回判定で敗れ2連敗。しかし、昨年はブラジル・リングで2勝。6月11日(日本時間12日)にはカナダ・ケベックシティで、ウィルケンス・マチュー(カナダ)=15戦全勝(10KO)=の持つ、NABFスーパーミドル級王座への挑戦が決まっている。
ファルカンはSNSを通じ、あるコレクターからメダル買取の申し出があった事から交渉が始まった事を明かし、「金額については交渉済みですが、合意済みのことなので詳細は明かしません。また、許可を得ていないため、相手の名前も明かしません。ただ、その金額は、私のジム建設や、家族、そして子供たちのために大いに役立つものになるでしょう」と語った。

「これまでの道のり、私が成し遂げてきた全てが頭の中を駆け巡りました。その思いは私を2012年のロンドンへと連れ戻し、オリンピックのメダルを獲得したあの瞬間に戻りました。私はメダルを見つめてこう言いました。もう14年近く、ずっとこのメダルと一緒にいるんだと。しかし、ブラジルではその価値が認められていない」
ファルカンは、契約に定められた守秘義務条項に従い、買い手の名前や取引金額については公表できないと説明しているが、それでもなお、その金額は自身の個人的および職業的な計画にとって極めて重要である事を強調。
「私はメダルを売ったが、自分の歴史は売っていない。私は依然としてオリンピックメダリストだ。メダルは象徴に過ぎないが、私の歴史はそれよりもはるかに価値がある」と語りながらも、「私は幸せではない。オリンピック選手がメダルを売るというのは、とても悲しい」と正直な胸中を明かしている。
