37歳のIBF世界ライト級王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)=18勝(12KO)3敗=は、自身のインスタグラムで熟考の末に、プロボクシングからの引退を決めた事を発表。12年間に及ぶリング生活に終止符を打った
「何よりもまず、主イエス・キリストが私のためにしてくださったすべてのことに感謝したい。高慢な若者を、名声や遺産、知名度が人生の真の目的ではないことを最終的に教えてくれた道に導いてくださったことに。 リング上でも人生でも、すべての勝利とすべての敗北に感謝しています」
「そしてもちろん、世界中の親愛なるボクシングファンの皆さんに感謝しないわけにはいかない。 皆さんはいつも情熱を持って私を応援してくださり、10年以上にわたって私と共に忘れられない試合を生き抜いてくださいました」
「私のキャリアが終わりを迎えるにあたり、リングの上だけでなく、人が真の勝利を得るために進むべき方向が明確になったことに感謝しています」とロマチェンコは言い、家族や友人たちに感謝の言葉を述べた。

2008年北京五輪フェザー級、2012年ロンドン五輪ライト級で金メダルを獲得したロマチェンコは、アマチュア戦績391勝1敗の記録を引下げて、ボブ・アラムのトップランクと契約。
2013年10月のプロデビュー戦で、世界6位ホセ・ラミレス(メキシコ)を4回KO。史上最短となるプロ2戦目での王座獲得を目指し、2014年3月1日(日本時間2日)に米・テキサス州サンアントニオで、WBO世界フェザー級王者オルランド・サリド(メキシコ)に挑戦。
しかし、サリドは計量失格で王座剥奪。ロマチェンコが勝てば新王者として試合は行われたが、老獪なプロファイター、サリドに攪乱され12回判定負け。新記録達成はならなかったが、3戦目のゲイリー・ラッセルJr(米)とのWBO王座決定戦を制し、プロ3戦目でサリドの後継王者となった。
以来、世界のトップに君臨。世界最速となる12戦目での世界3階級制覇を達成。多彩なテクニックと華麗なステップを武器に、速いコンビネーション・ブローで対戦相手を翻弄するボクシングで、一時代を築き上げた。

トップランクのボブ・アラムは、「彼は世代を代表するチャンピオンであり、ワシル・ロマチェンコのプロボクシングキャリアを応援できたことは、大変光栄なことでした。彼がこのスポーツに参加できなくなるのは寂しい限りだ。」と語り、稀代のテクニシャンの引退を惜しんでいる。
ロマチェンコはボクシングトレーナーだった父(アナトリー)によりボクシングの手ほどきを受けたが、最初はアイスホッケーの選手を目指し、ダンス、体操などのトレーニングを経験。1日6時間のトレーニングと食事制限、睡眠を基本とした生活サイクルで、アマチュア、プロの頂点に立った。
「私は人生でもジムでも多くの失敗をしてきたが、父はいつも私のそばにいて、必要なときには私を正してくれた。 温かい思い出がたくさんある。父はボクシングだけでなく、自分の子供たちの模範となる方法を教えてくれた」
「家族へ、君たちはいつも私の味方だった。 私の勝利を分かち合い、私の敗北の痛みを感じてくれた。 その敗北が私たちをより強くしてくれたんだ」
亡き父と家族への想いを公表したロマチェンコは、リングという戦場から離れ、愛する家族と安らかな時間を過ごす事が出来る事に安堵。素晴らしいチャンピオンでした。